純金積立はやめとけ?「金のプロ」質屋が教える、オススメしない理由と仕組み【鑑定士監修】
純金積立は、少額かつ安定的な資産として注目が集まっていますが、「やめとけ」「おすすめしない」と言われることもあります。なぜ、純金積立はやめとけと言われるのでしょうか?
今回は金の売買を長年にわたって行ってきた老舗質屋の須賀質店が、純金積立の仕組みやおすすめしない理由を解説します。「純金積立はやめとけ」と言われた方はもちろん、純金や実物資産に興味があるという方もぜひ参考にしてみてください。
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目次
1 純金積立とは?仕組みや特徴
純金積立とは、毎月定期的に純金を自動購入する仕組みのことです。購入金額を決めて、その価格分の純金を購入する定額積立と、購入する金のグラム数を決めて購入する定量積立があります。
積み立てた金は運営会社を通じて現金化でき、購入額より高く売却できれば利益が得られます。金の相場は日々変動していますが、基本的に右肩上がりとなっているため、長期間積み立てることで利益が得られる可能性を高めることができます。しかし、売却時に購入額を下回るリスクもあります。
純金積立の特徴は、月々1,000円~という少額でも始められる点です。また、金は株式証券や不動産よりも相場が安定しているため、初心者でも投資しやすいのも魅力です。
近年は、感染症や世界情勢の不安定さによって、実物資産を保有する方が増加しています。そういった中で、純金積立は少額かつ安定的な資産として注目を集めています。
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2 純金積立が「やめとけ」と言われるのはなぜ?
純金積立が「やめとけ」と言われるのは、下記の5つがあります。
①手数料が高い
②利息・配当金がない
③売却益が小さい
④相対価値が不安定で、メインの投資先に向かない
⑤非課税制度であるNISAが使えない
それぞれ、解説していきます。
2-1 手数料が高い
1つ目の理由は、手数料が高い点です。純金積立は、買付時に手数料がかかります。運営会社によって手数料は変わりますが、2~3%が一般的です。株式投資にかかる手数料は1%と言われているため、他の方法に比べて割高と言われています。
また買付時以外にも、年会費や引き出し手数料などがかかることもあります。金相場の上がり幅が手数料と同等であれば、利益がほとんど出ないこともあると理解しておきましょう。
2-2 利息・配当金がない
株式や債券、不動産などの資産では、保有していれば配当金や株主優待、利息、家賃収入などのインカムゲインが入ってきます。しかし純金積立では、こうしたものは入ってきません。金を資産として保有できますが、あくまでも保有しているだけでは利息や配当金にはつながらず、売却した時に初めて利益を得られる仕組みとなっています。資産保有で利息や配当金を得たいという方は、他の投資方法を組み合わせて利用しましょう。
2-3 売却益が小さい
純金積立は、売却益が小さいと言われています。購入価格と買取価格の差額が大きいため、資産の売却益が減ってしまいます。投資用語では、これを「スプレッドが広い」と言います。
一般的にはスプレッドが狭いほうが利益は多く、スプレッドが広いと利益が少なくなると言われています。純金積立は、他の投資方法よりもスプレッドが広く設定されているため、売却しても得られる利益が低いとされています。
2-4 相対価値が不安定で、メインの投資先に向かない
金の相場は相対的に価値が変動するため、メインの投資先には向いていません。金の相場は為替や米国の経済状況に大きく影響されており、これらの市場が上昇しているときは、下落傾向にあります。他の資産と比べれば安定性は高いと言えますが、100%安定しているとは言い切れません。
資産をすべて純金積立や金として保有するのではなく、あくまでもメインは他の投資にして、リスク分散のために金を保有するのがオススメです。
2-5 非課税制度であるNISAが使えない
非課税制度であるNISAが使えない点も、「純金積立はやめとけ」と言われる理由の一つです。NISAは、投資信託や株式などの利益に対してかかる税金が非課税になる税制優遇制度です。これによって、本来かかる収益の20.315%が非課税になります。純金積立はNISAの対象外のため、利益が出た場合、課税されます。金価格が上昇しても、利益がそのまま出るわけではありません。
NISAは安全性が高いランナップが多いため、とくに投資を初めて行う人はNISAから始めるのがおすすめです。
非課税で金に投資したい方には、NISAで投資できる金価格連動の銘柄を調べてみるとよいでしょう。
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3 純金積立の主なメリット5つ
純金積立の主なメリットには、下記の5つがあります。
①少額から初められる
②現物で金を保有する必要がない
③安定性が高くリスクを分散できる
④価格変動リスクを抑えられる
⑤希少性・換金性が高い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 少額から始められる
純金積立の特徴は、毎月1,000円から積み立てられる点です。金の延べ棒を購入する場合、最小単位で5gからとなっており、安くても7万円前後の資金が必要になります。また、500g未満の金の延べ棒には販売手数料がかかりますが、販売手数料がかからない500g以上の場合、実に700万円以上の資金が必要になります。
一方、純金積立では低コストで気軽に金を保有できます。安定した価値を誇るため長期間の運用にも最適です。ただし定量積み立ての場合、金価格と購入数量によっては想定以上に積立金額が高くなる場合があるため注意が必要です。
3-2 現物で金を保有する必要がない
金は株式や不動産と異なり、実物資産です。しかし自分で金を保有しようとすると、紛失や盗難などのリスクがあります。金庫を購入して自宅で保管したり、貸金庫を借りて保管したりする手段もありますが、コストがかかる上に、盗難や災害による紛失する可能性もあるでしょう。
純金積立では、運営会社や証券会社が金の現物を保管してくれるため、上記のようなリスクを回避できます。金の保管に不安を抱いている方にも、始めやすい点がメリットと言えるでしょう。また、積み立てた金は、現金だけでなく金の延べ棒や金貨に交換することも可能です。
3-3 安定性が高くリスクを分散できる
株式投資では、購入した企業が倒産すると株の価値はゼロになってしまいます。しかし実物資産の金ではそのようなリスクはなく、安全性の高い資産として知られています。
また、インフレなどの影響を受けづらく、世界経済が不安定になった際には、金の価値が高まる傾向があります。そのため、リスク分散という役割を果たすことも可能です。株式や不動産など価値が変動する資産を保有する方にとっては、安全性の高い金を保有することで、仮に損失が出ても資産全体のダメージを減らすことができます。
3-4 価格変動リスクを抑えられる
純金積立は、運営会社に月々いくら支払うか決定して行うもので、少額を長期間積み立てて資産を増やしていきます。毎月一定額を購入する場合、ドルコスト平均法を採用しています。ドルコスト平均法は、価格が低いときには、購入口数が多くなり、価格が高いときには購入口数が少なくなる仕組みで、結果として購入単価を平準化し、平均買付単価を抑える効果があります。
そのため、純金積立は比較的安定しており、長期間続けやすいという特徴があります。毎月投資する金額が変動しないため、投資金額の把握がしやすい点も魅力です。
3-5 希少性・換金性が高い
金は、地球上の限りのある資源の一つです。これまで採掘してきた金の量は約18万トンと言われており、地中の埋蔵量は約5万トンと言われています。その希少性の高さは、今後も変わることはなく高い価値を保ち続けるでしょう。
日本だけでなく世界中で、金は高い価値を持つものとして認識されているため、多くの国で現金化することができます。円やドルなどの法定通貨とは異なり、特定の国や地域の信用力に価値が左右されないのもメリットと言えるでしょう。
純金積立の場合、運営会社にもよりますが、売却注文が約定してから、早ければ数日で現金化できます。
4 純金積立をオススメできるのはどんな人?
純金積立は、下記に当てはまる方にオススメです。
①少額から始めたい人
②リスク分散をしたい人
③短期的な利益の獲得を急がない人
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 少額から始めたい人
純金積立は、少額から始められるメリットがあります。金の相場はここ数年で高騰しており、24金のインゴットは10gでも10万円以上します。そのため、投資や金の購入が初めてという方にはハードルが高いと感じてしまいます。しかし純金積立の場合、毎月1,000円など少額から始めることができます。
純金積立を定額で行う場合、価格が低いときには購入量が増え、価格が高いときには購入量が少なくなり平均購入単価を抑えられる「ドルコスト平均法」が適用されます。まずは少額で始めたい方には、純金積立のメリットを感じられるでしょう。
4-2 リスク分散をしたい人
すでに株式証券や不動産、その他複数の投資を行っているという方にとっては、純金積立はリスク分散につながります。とくに、金は株式市場が下落した際に相場が上がる傾向があります。実際に2020年にコロナウイルスが蔓延した際、株式や債券の価値が暴落したのに対し、金の相場が上昇したという事例もあります。
そのため、ポートフォリオを多様化して安全性を高めたいという方に、純金投資はメリットがあります。ただし、純金積立は売却するまで利益は得られません。他の投資と組み合わせて利用するのがおすすめです。
4-3 短期的な利益の獲得を急がない人
純金積立は、長期的にコツコツと積み上げていくタイプの投資方法です。金は長期的にみると相場が上昇しているため、短期的に利益は得られなくても、長く保有して利益を得られる可能性を高めています。
反対に、すぐに利益を獲得したいという場合は純金積立にメリットは感じられないでしょう。金相場は日々変動していますが、上昇したとしてもその幅は小さく短期で利益を獲得するには多額の投資をしなければいけません。また日によっては下落する事もありますので、長期的な運用を前提として始める必要があります。長期的に資産形成をしていきたい場合には、ポートフォリオの一つとして純金積立はオススメです。
5 純金積立をオススメできないのはどんな人?
反対に、純金積立を避けたほうが良い方の特徴は次の3つです。
①手数料をかけたくない人
②米ドルの値動き・経済情勢に詳しくない人
③短期間で大きな利益がほしい人
それぞれ詳しく見ていきましょう。
5-1 手数料をかけたくない人
手数料をかけたくない人には、純金積立はオススメできません。純金積立は、株式投資よりも買付手数料が高く、運営会社によっては保管費用や年会費などもかかります。金相場が思う様に上昇しなければ、手数料で利益が相殺されてしまう場合もあるため、手数料をかけずに資産運用をしたい方は、別の方法を検討するようにしましょう。手数料をかけずに実物資産を持ちたい方は、金の現物保有がオススメです。
5-2 米ドルの値動き・経済情勢に詳しくない人
純金積立は、米ドルの値動きや米国の経済情勢に大きく影響されます。基本的に米ドルが上がれば金の相場は下がり、米ドルが下がれば金の相場は上がる傾向にあります。そのため、為替や経済情勢に興味がない・詳しくない人は金の相場の変動を見極めることが難しくなります。手数料のかかる純金積立は、売却時には市場の変動を見極める必要があるため、利益確保のチャンスを逃してしまう可能性が高くなります。
5-3 短期間で大きな利益がほしい人
純金積立は、長期間保有することで少しずつ資産を増やしていく仕組みとなっているため、すぐに大きな利益を得たい方には向いていません。金の価格変動は小さく、多額の利益を得たい場合には大きな金額を投資する必要があります。売買を繰り返すことで、大きな利益を得られる株式やFXとは異なることを念頭に置いておく必要があります。純金積立を行う場合は、長期保有を前提とした運用計画を立てるようにしましょう。
そもそも投資初心者の方は、短期間に大きな利益を出そうとすると失敗するリスクが高まります。そう言った方はまずはNISAなど長期間の投資から初めて、投資の仕組みなどを学んでいくのが良いかも知れません。
6 純金積立で失敗しないためのコツ
純金積立を始める際には、下記のポイントに気をつけましょう。
①信頼できる運営会社か調べる
②運営会社ごとの手数料やコストを比較する
③万が一の場合の返金保証について確認する
④純金積立の特徴や税金について把握する
それぞれ詳しく解説していきます。
6-1 信頼できる運営会社か調べる
純金積立は、証券会社や貴金属を取り扱う商社が取り扱っています。必ず事前にその会社を調べるようにしましょう。事前に調べずに安易に決めてしまうと、運営会社が倒産した際に返金されない、積み立て途中にサービスが終了するといった危険にさらされるかもしれません。
こういったリスクを回避するためにも、事前に運営会社の運営年数や知名度、サービス内容、業績、実際に利用した人の口コミなどを調べるようにしましょう。
6-2 運営会社ごとの手数料やコストを比較する
運営会社によって手数料が異なるため、必ず事前にどういったコストがかかるのか把握しておきましょう。純金積立にかかる手数料は、
・買付手数料
・口座管理料
・保管料
・売却手数料
・年会費
・現物請求のコスト(保険料、郵送料など)
などがあります。純金積立で利益が出ても、手数料が高いと受け取れる利益は減ってしまいます。利益を最大限享受するためにも、各運営会社の手数料やコストを比較し、他のポイントとのバランスを見ながら選ぶようにしましょう。
6-3 万が一の場合の返金保証について確認する
純金積立には、大きく特定保管(混合預託)と消費預託の2種類があります。万が一運営会社が倒産した場合の対応が異なるため、必ずチェックしておきましょう。
違いは下記のようになります。
特定保管(混合預託) | 消費預託 | |
保管方法 | 運営会社が保管 | 運営会社を介した別会社が運用 |
所有者 | 契約者 | 運営会社 |
保管のコスト | 要 | 不要 |
返金保証 | 返金可能 | 返金不可 |
特定保管(混合預託)では、金の所有者は契約者ですが、消費預託では金の所有者は運営会社となります。万が一運営会社が倒産した場合、これまで積み立てた金の返金が特定保管(混合預託)ではできるものの、消費預託では返金されないリスクがあります。
返金という安全性を求める場合は、特定保管(混合預託)を選択するようにしましょう。
6-4 純金積立の特徴や税金について把握する
純金積立で失敗しないコツためには、純金積立の特徴や税金について、しっかりと把握することが重要です。また、純金積立は預金保険の対象ではないため、元本保証もなく金の相場変動によっては元本割れするリスクもあります。
また、利益や損失が出た場合は税務処理が必要になります。利益が生じた場合は譲渡所得として総合課税扱いになるため、あらかじめこうした点を念頭に置いておくようにしましょう。
7 金は現物保有がオススメ!
「純金積立はやめとけ」と言われることが多いですが、金の相場はここ数年上昇しており、金での資産保有を検討している方も多いかと思います。
そんな方にオススメなのが、金の現物保有です。金を現物で保有していれば純金積立のデメリットである、手数料が高いという点はクリアできます。また、すでに株式や債券などの資産を保有している方にとっては、分散投資ができます。
純金積立では運営会社への口座開設の登録をしなければいけません。個人情報や口座情報などの審査もあるため、すぐに純金積立を始めるのは困難と言えます。しかし金の現物保有であれば、専門店や質屋、ネットショップで購入することができます。
投資である以上、100%の安全性は保障できませんが、手数料もかからず相場も右肩上がりのため、他の投資と比べると金の保有は安全性が高いと言われています。
投資のリスク分散や、初めて投資を行う方、長期的に資産を拡大していきたいという方は、金の現物保有がオススメです。
8 まとめ
純金積立はやめとけと言われる理由やオススメできる人・できない人を解説しました。純金積立は手数料が高く、売却益が少ないなどの理由から「やめとけ」と言われることがあります。少額で長期間、コツコツと投資をしたい方にはオススメですが、手数料をかけたくない、経済情勢に詳しくない方にはオススメできません。
金のメリットを最大限確保したいのなら、現物保有がオススメです。実物資産の保有や分散投資をしたい方は、金の現物保有を検討してみてはいかがでしょうか。
